投資顧問会社（投資助言業）として日本最大規模の顧客数とメールマガジン読者数（27万7958人）を誇る株式会社FPOのFX・株式投資応援ブログです。

トランプ大統領は日本経済に是か非か

排他主義的政策に抗議デモ、民主党議員のボイコット、歴史的低支持率世論を分断した第45代大統領の就任式を目前にした米国の行方を占う

「おとがめなしで海外移転しようとする企業には高い関税をかけてやる！」

まるでケンカで罵り合うようなコメントですが、これはトランプ米新大統領が、米大手自動車メーカーGMがメキシコ新工場計画を進めようとしていることに対し警告した発言です。

GM社は製造コストを削減するために、米国よりも人件費が安いメキシコに自動車工場を建て、米国に輸出する計画を立てているのですが、トランプ大統領はメキシコではなく米国内に工場を作れ！とGMの経営者に向けて言っているのです。GM社だけではありません。

「米国向けのカローラを作るためにトヨタはメキシコに工場を建てるつもりだ。ありえない！米国に工場を建てろ！さもなくば、多額の税金を支払わせるぞ」これもトランプ大統領のコメントです。

これに対しトヨタ自動車の豊田社長は、このコメントの4日後にメキシコへの工場建設計画は進めるが、米国に今後5年間で1兆1000億円の投資を行うことを表明しました。

このことに対する正式なコメントはありませんが、新しいトヨタの決定を引き出したことで、トランプ新大統領の〝脅し〟は見事に成功したといえそうです。まだありますよ(汗)

「(米国の)製薬産業はひどい！たくさん薬を作っているが、かなりの部分は米国で作っていない。何十億ドルも払わなくて済むように適切な価格になるようにする」これは、薬の価格を引き下げることを宣言したものです。

米国ではお医者さんに診てもらう場合の医療費がとても高額です。例えば米国で盲腸など手術を受ける費用は、日本の数倍もかかることがあり、100万円を超えるケースもあるとか。そういった要因の１つである薬の製造を米国で行わないなら、薬の価格を下げる政策をとるぞ！と言っているのです。

 

ツイッター拡散で狙う米国第一主義？！

Thank you for a wonderful evening in Washington, D.C. #Inauguration pic.twitter.com/a6xpFQTHj5

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) January 20, 2017

何かとお騒がせなトランプ氏の本音？ですが、テレビや新聞などのマスコミから報道されているのではなく、実はトランプ氏自らがつづった“ツイッター”によって拡散しています。

トランプ氏のツイッターが気になるとして、フォローしている人はなんと2000万人超え！もちろん世界トップクラスです。まだまだトランプ発言をリアルタイムで楽しみたいという人は増えているようです。

実は、そういう私もフォローしているのですが、吉本興業の人気お笑い芸人さんやビートたけしさんのような、ハチャメチャな発言に思わず笑ってしまうことがあります。

ツイッターでつぶやかれた企業の経営者は、びっくりするくらい素早く反応して、トランプ氏が好むような決定を行っているのをみると、「豊臣秀吉や徳川家康の家来たちも、こんな感じで慌てふためきながら殿の言葉に即座に反応していたのだろうな～」と思ってしまいます。

トランプ氏が自ら情報発信しているため、テレビや新聞などが報道するよりも、早く人々のもとに内容が届くので、既存のテレビ局や、新聞社はトランプ氏をつかみきれないで歯がゆい思いをしているかもしれません。

ただし、こういった様々な企業に対する〝脅し〟は、内容をよく見てみると、『米国内で仕事をもっと増やすために米国内で工場を作ってほしい』『米国内の雇用を増やさないような企業は、外国企業はもとより国内企業にだって高い関税をかけるぞ。そうならないようにしてほしい』というメッセージ。

要するに米国内で仕事を増やし、国民の仕事と収入がもっと増えるようにして米国の景気をさらに盛り上げ、世界ナンバーワンを目指しているという考えからきているものです。

このことを理解している米国の中産階級(日本でいうと、サラリーマン世帯)、特に白人でありながら仕事や収入に恵まれない人たちの絶大な人気を得ることで、トランプ大統領への期待が盛り上がっているという構図です。

一方、話し方が雑で、上品ではないとして、トランプ大統領嫌気派も米国民のおよそ半分くらいいて、米国内でもトランプ氏に対する評価は割れています。就任日直前の調査では、40%という歴史的な低支持率となっています。

 

世界経済を揺るがすトランプ政権始動

トランプ政権は1月20日から本格スタートします。現時点では10年間で約1兆ドル(約114兆円)の財政政策と、法人税減税を計画。

これらに加え、米国内に工場を作るように積極的に個別企業に働きかけているので、すでに協力を表明しているトヨタやソフトバンクだけでも、すでに2兆円程度の米国向け投資を表明しています。

もし、米国でなく日本にこれだけ投資してくれたら、日本国内ももっと景気が良くなり、個人の財布ももっと膨らむはずと思うのですが・・・。

トランプ氏の強みは、発言そのものより、それによって議会で政策を実現させる上院、下院の協力を見込めることにあります。武器輸出強化、金融規制緩和、米国の株高重視、イスラエルの擁護は共和党政治の王道、それが各国の恐怖になっています。

オバマ氏は、むしろ、こういったことを抑制し、共和党政権の議会から強い反発を受けてきました。したがってトランプ政権はこういった政策を実行していくことで、従来からの共和党支持者から強い賛同を得られやすくなるはず。

ただトランプ政治は、白人や富裕層にとって有難いものになる一方で、その恩恵を受けられない米国民の不満は徐々に高まることになるでしょう。景気は悪化し、勢いのない米国になるのではないかというリスクが見え隠れします。

はたしてトランプ大統領が作る米国はどんな世界になるのか。そして、日本経済はどうなる？『yes we can』という言葉に今さら焦がれてしまうのは私だけ？汗

【FPOリサーチ部：相場 美佐（あいば みさ）】