米雇用統計の事前予想が信用できない理由
イベント時の刺激的な相場変動に飲み込まれてはいけない!!データを可視化して「流れ」を把握し、冷静な判断を心がけよう
こんにちは、盛岩外四です。先日のメルマガの最後に「ほとんど変化がみられなかった米雇用統計発表時のドル買いは、市場参加者の条件反射的なものでしょう」と書いたところ、あちこちから「クレーム」をいただきました。
先日のメルマガ:「損小利大を目指す」は明らかに誤解!?
「非農業就業者数が事前予想から2万人も上振れしたのに、変化が見られなかったとはどういうことか!(怒)」というのが、その主旨です。
確かに、2万人の上振れはポジティブな判断をしたくなりますよね。ただし、判断基準にするほどの価値が「事前予想」にあれば、の話です。下のグラフを見てください。
これ、直近約1年間の事前予想の推移です。一番低かったのは2016年6月の16万人増、一番高かったのは2017年3月の20万人増です。振れ幅は最大で4万人ですから、それなりの変化に見えるかもしれませんが、この期間の3カ月移動平均は18万人±1万人です。予想と結果が誤差の範囲に収まっているなら真に受けなければなりませんが、そうではありません。結果と比較すると、とても真剣に予想しているとは思えないのです。
実際に発表された非農業就業者数は最大が23万5000人増、最小が9万8000人増ですから、振れ幅は13.7万人に及びます。つまり、アナリストやエコノミストの予想は結果の3分の1にも満たない幅しかカバーできていないことになります。
そもそも、雇用統計は振れ幅の大きい経済指標ですから、予想するのはとても難しいとされています。まして、雇用統計の調査は郵便でしているそうなので、予想と結果を比較して相場の行方を推し量るのには無理があるのかもしれませんね。
それでは、もう少し引いた目で見てみましょう。それが2番目のグラフです。
2014年1月発表(2013年12月)時から見ると、以前は予想にも躍動感が見られました。2016年6月まではトレンドもはっきりしています。
こうして比較すると、最近1年間の事前予想がどれだけやる気がないか、予想と結果を比較する意味があまりないことが分かります。
雇用統計発表時の急激な動きは、多くがシステムによるものです。米労働省のホームページで結果が発表されますが、その位置をシステムが読むという仕組みのようです。
予想に対して本当に上振れしたり、下振れしたりして、生身の市場参加者が参戦してくるなら、相場の動きは短期的にもトレンドを形成するでしょう。しかし、システムが結果を読み取り、自動的に買いや売りを指示する仕組みであれば、後続は期待できません。
これが「ほとんど変化がみられなかった」「条件反射的な動き」と書いた理由です。超高給取りのエコノミストやアナリストが、こんなやる気のない予想をしていれば、少しは嫌みな言い方もしたくなります。
しかも、発表された雇用統計に対して「素晴らしい結果だ!我々の予想をはるかに超えた内容で、FOMCで利上げを決定する足かせがなくなったといえるだろう!」なんて欧米人特有の大げさな感想を聞かせられると、「うんざり感」はいっそう強まります!!
ファンダメンタルズも考慮するトレーダーの皆さん、相場に振り回されないように、「点」ではなく「流れ」で見てはいかがでしょうか。イベント時の相場変動はとても刺激的ですが、それに飲み込まれてはいけません。相場に関係するデータを可視化して「流れ」を把握すれば、冷静な判断ができるようになるというものです。



いつも面白い情報をありがとうございます。
時に参考にさせていただいております。
ただ大先輩の盛岩先生のおっしゃることなので私には当然理解できないことが多いと思って読ませていいただいているのですが、今回の米雇用統計の事前予想のグラフから、予想しているアナリストやエコノミストがいいかげんな予想をしているという結論にいたる理由がよくわかりませんでした。
そこで以下の二点を質問させていただきます。
1.おそらく事前予想のグラフの数値と実際の統計の数値の乖離差が大きいとおっしゃっているのではないかと思いましたがよろしいでしょうか?
2.今回のドル円相場を考えると雇用統計うんぬんという前に地政学的リスクを考慮して円が買われすぎていたため反応が鈍かったのではないでしょうか?
私のような若輩ものですので末筆を汚すような質問で申し訳ございませんが、もしもお答えいただけると幸いです。
池辺雪子氏のブログによると、テクニカルでチャート予測は
できるそうです。