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通貨政策の比較から相場の向きを読む

政策的にみれば円安ドル高になる?!ノーベル賞を受賞した米経済学者クルーグマンが発表した経済理論から相場の方向性をチェックしてみる

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「ドルは強すぎる!」今世界で最も注目を集めるトランプ米大統領が就任直前の1月17日にウォールストリート・ジャーナル誌のインタビューで答えたコメントです。

これを受け、トランプ大統領がドル高を抑える政策をドンドンやっていくに違いないとの思惑が広がり、この発言があった1月17日のドル/円相場は、114.2円から一気に112.5円までドル売り・円買いとなる場面がありました。

ここで気をつけて欲しいことがあります。新聞やテレビなどマスコミ報道は、本当は1時間以上にわたるコメントであっても端的にインパクトのある部分だけを視聴者に伝えようとする傾向があります。

その影響で〝キーワードだけが独り歩き〟してしまい、本当の内容とは掛け離れた伝わり方をするという現象が起こりがちです。

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実はこのコメントもトランプ大統領の思うところとは、かなり違う意図で伝わってしまったケース。そもそもこのインタビューは「大統領に就任したら、中国に対してすぐに為替操作国と認定するつもりですか?」というもの。

それに対するコメントは「就任日に(為替操作国と)認定はしないが中国と協議する。中国は為替操作している。(人民元に対し)ドルは強すぎる。我々にかなりの打撃を与えている」です。つまり、トランプ氏は中国人民元に対してドルが高いと発言しているのです。

しかし、各新聞社やテレビ局が見出しとして印象に残るように報道した“キーワード”が「ドルは強すぎる」であったために、速報でこのニュースを知った投資家やトレーダーが直ちに反応し、ドル/円相場でドル売り・円買いが急速に進んだのです。

時間が経つと〝円に対してのコメントではなかった〟と本来のニュアンスを理解するようになって、翌18日には114.7円までドル買い・円売りに振れるという展開になりました。

下のチャート図を見ると、1月17日に大きく陰線を引き、その翌日18日は大陽線となっていることが見て取れます。

為替相場とは、こうした早飲み込みした人たちが実際にポジションをとることも多いので、ときに予想もつかない突発的な乱高下が引き起こされることがあります。

こういったことがポジションをとった方向は正しかったのに、瞬間的な相場変動でロスカット水準に引っかかり負けトレードになってしまうという結果を引き起こす要因です。

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大局を見極めトレンドに乗る

突発的な動きに翻弄されることなく、大局を見極めるための何かいい方法はないのか?そこで、トランプ氏が大統領選挙に勝利してから12月15日のFOMCまでのおよそ1ヵ月の期間に注目してみました。

11月9日、それまではヒラリークリントン候補が当選する見通しだったところにトランプ候補の優勢が伝わり、一時的にドル/円相場は105円台から101.1円まで急落しました。やはりここでも下馬評を覆すサプライズに慌てたトレーダーは多かったことでしょう。

しかし、その後はトランプ氏の選挙公約の実現を織り込む流れとなり、118.6円(12月15日)まで約17円ものドル買い・円売りトレンドが発生しています。一気にこの水準までドル買いが進むと見通していた投資家は少ない?!もし大局を見極めることができれば・・・。

実は、一貫してドル買いが続いた背景に、日米の通貨政策の比較で相場が動いたという見方があるのです。(※米10年債利回りの上昇もトランプ政権の政策を見通して上昇)。

 

マサチューセッツ・アベニュー・モデル

本来、G20メンバー国の間で通貨政策は公表されるものではありませんが、米国、日本はもとより欧州や英国において採用されている考え方があります。

それがノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者、ポール・クルーグマン氏が発表した「マサチューセッツ・アベニュー・モデル」という理論です。

ちなみに、この理論を丁寧に解説している日本の書籍は、私の調べた限りでは『通貨政策の経済学』(ポール・クルーグマン箸 東洋経済新報社刊)という1冊しか出ていません。興味のある方はご一読なさってみて下さい。

簡単にいうと、各国政府は「財政政策」「金融政策」「通貨政策」をどのように組み合わせると、各国が目指す経済状態に持っていくことが出来るのかということを説明する経済モデルです。

この3つの政策の組み合わせは下記の8通りです。

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しかし、結果的に景気を悪化させることや国の借金を増やすだけなど、マイナスの影響の方が大きいと思われる5から8の組み合わせは行わないだろうとされるので、現実的には1から4のいずれかの組み合わせが採用されていると考えられます。

そこで、米国のトランプ政権が目指している米国経済と、安倍政権が実現したい日本経済の状況を踏まえて、実施している組み合わせを見てみます。

トランプ大統領は、米国内に工場を多く作ることで雇用を拡大させることと米国の景気をさらに拡大させようと財政政策を行うことを重視しているので、3の組み合わせを当面採用(青色表示)しています。当然、副作用として、財政赤字の拡大(※1)や輸出の減少による貿易赤字の拡大(※2)が見込まれます。(※1,2:米国はオバマ政権でも財政赤字であった)

一方、安倍政権はアベノミクスでデフレからの脱却、構造改革・規制緩和を通じて景気拡大を目指しているので、4の組み合わせを採用(赤色表示)しています。

「通貨政策」をみると、米国は当面ドル高誘導、日本は円安誘導になるので、政策的にみればドル/円相場の方向はドル買い・円売りに向かうという見通しです。

ただし、実際に景気が良くなったり、デフレが回復したり、輸出入が増減するのは、政策が実施されてからある程度の時間が必要です。貿易収支が狙い通りの方向に向かうには、2年程度タイムラグがあるという研究結果もあります。

しかし、ドル/円相場のような為替レートは、政策の実現を見通した方向にいち早く反応する傾向があります。2017年は欧州での選挙が注目されているので、政策変更があれば、このモデルに沿って相場の方向性をチェックしてみるといいかもしれません。

【FPOリサーチ部:相場 美佐(あいば みさ)】

 

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5件の送信がありました。
丸 荘太郎 さん

三月のFOMCにおいて、利上げの可能性がかなり高くなっております。このまま行けば、利上げは確実です。そうすると、ドルが上がり、日本の株価も上がるでしょう。

加藤 さん

目先の神経質な情報よりも広く大きな視点で読み取れる方向性を

教えて下さい。

前田 さん

結果が全て。損しなければ良し。

hanah さん

今回のトランプ大統領発言の「ドルは強すぎる」報道と為替の変動の実態を詳しく解説している記事を初めて読み、マスメディの報道には気をつけなければと思いました。

miyazaki さん

楽しみにしています。

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